こんにちは、ともに介護事業責任者の藤原です。
お盆や正月など、久しぶりに実家へ帰省したときに、親御さんの暮らしぶりにちょっとした違和感を覚える方は少なくありません。
片付けが行き届いていない、料理の手際が落ちている、以前よりも反応が遅い…。そんな変化に触れたとき、「年を取ったから仕方ない」と思う一方で、「このまま見過ごしていいのだろうか」と不安を抱えるご家族も多いのではないでしょうか。
今回はケアマネジャーの谷口とともに、親の老いに気づいたときにどんな行動ができるのか、支援につなげるための視点についてお話ししました。
帰省で気づく「親の変化」──それは老い?病気?
藤原:お盆やお正月の帰省シーズンって、ご家族からの相談が増える印象があります。
谷口:そうですね。地域包括支援センターでも、長期休暇のあとに「久しぶりに帰省してみたら様子が違っていた」というご相談が多く寄せられているようです。
藤原:どんな気づきが多いんでしょうか?
谷口:例えば家が片付いていない、食器が山積みになっている。家族が帰ってくる準備ができていない。そうした状況は、実はかなり重大なサインかもしれません。本来なら「誰かが来る」とわかると、張り切って片付けをする方が多いんです。それすらできなくなっているというのは、単なる老化ではなく、認知症の可能性もあるんです。
藤原:なるほど。でも、子ども世代からすると「年を取ったから、面倒になってきただけかな」と思いがちですよね。
谷口:そうなんです。もちろん加齢による変化もあります。ただ「以前より料理の段取りが悪くなった」「動きが鈍い感じがする」など、これまでとの違いを感じたときは注意が必要です。親御さんが昔のしっかりした姿を見せようと頑張るケースも多いので、違和感が出ている時点で、実際には要支援や要介護レベルまで進んでいることもあります。
相談につなげる一歩──「気になるんです」と伝えてみる
藤原:そうした違和感を覚えたとき、どう動けばいいかを悩まれるご家族は多いですよね。
谷口:そうなんです。けれどいきなり親御さんに、「介護サービスを使いましょう」と言う必要はありません。でも、「ちょっと気になる」と感じた段階で、地域包括支援センターや地域の相談窓口を知っておくと安心です。「家族が気になっていることがある」と伝えるだけでも、専門職の視点から経過を見守ってもらえます。
藤原:必ずしもすぐに介護サービスにつながるわけではないことを知っておいていただけたらと思いますね。
谷口:そうです。むしろ、本人が「介護はまだ必要ない」と思っているうちに、支援機関と緩やかにつながっておくことが大切です。記録が残ることで、いざ遠方にいるご家族が本当に心配な事態に直面したときでも、「以前から相談があった」という経緯を踏まえて動いてもらえます。
藤原:本人が望んでいるのかどうか、その温度感を掴んでもらえるだけでも違いますね。
谷口:はい。民生委員さんに顔を知ってもらう、軽く挨拶しておく。それだけでも後の支援が入りやすくなります。大げさに構えるのではなく、「ちょっと気になるから相談だけ」と考えていただければいいんです。
支援につながる“めやす”と、家族ができること
藤原:ケアマネジャーとして、具体的にはどんなときに相談してほしいと感じますか?
谷口:「動作が緩慢になった」「今までスムーズだったことができていない」など、“これまでと違う”と思ったときですね。それが続いているようなら、声をかけていただきたいです。
藤原:要支援の認定を受けても、すぐにサービスを利用するとは限らないですよね。
谷口:そうです。デイサービスに通いたがらない方もいますし、ヘルパーを入れるほどではないケースも多いです。でも、地域包括支援センターに相談しておけば、民生委員や地域の関係者が気にかけてくれるようになります。「今は使わないけど、見守ってもらえる」ことが、家族にとっても大きな安心につながります。
藤原:同居しているご家族がいる場合も、安心できるとは限らないですよね。
谷口:そうなんです。ご夫婦で暮らしていても、元気な方が「そんなにしなくてもいい」と止めてしまうケースがあります。だから、外からの声が入ることはとても大切です。第三者の視点があることで、家庭内のバランスも整いやすくなります。
見守りの力が“これからの安心”を育てる
藤原:結局のところ、早めに「気にかけてもらえる環境」を整えることが大事ですね。
谷口:はい。支援を受けること自体がゴールではありません。大切なのは、地域の中で「誰かに見守られている」状態を作ることです。それがあれば、ご家族も本人も安心できます。
藤原:親の老いに直面するのは、誰にでも訪れることですから、少しでも多くの人と一緒に考える環境を整えておければ安心ですね。
谷口:そうなんです。一人で抱え込まず、早めに関わりを広げておくことが未来の安心につながります。「年を取ったから仕方ない」と片づけず、気づきを行動に移す。その小さな一歩が、親御さんの暮らしを守る大きな力になるんです。
藤原:本当にそうですね。そして私たち「ともに」も、地域のサポーターの一人として、皆さまと一緒に歩んでいきたいと思っています。ご家族の気づきや想いを受け止めながら、安心して暮らし続けられる地域づくりに、これからも力を尽くしていきましょう。
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